『クールベと海』 パナソニック汐留美術館
6月5日、パナソニック汐留美術館で開催されていた『クールベと海』展へ行ってきました!
GW突入前、東京都に緊急事態宣言が発令されてしまい、都内の美術館はどこも休館を余儀なくされる事態に…。GWに色々巡るつもりだったのになぁ。
結果的に再開後、『クールベと海』展へは滑り込みで見に行くことができました!
自然の絵に囲まれて、都会の中でマイナスイオンを感じる体験をすることができました。海や山、水辺などの絵が集められた自然がコンセプトの展示でしたね。
良い展示でした!
続きからもう少し詳しく書いていきます~。
緊急事態宣言の影響による美術館休館
2021年4月10日~6月13日の期間で開催が予定されていた本展示ですが、
コロナウイルス感染拡大の影響でGW開始直前の4月23日、東京都が緊急事態宣言を発令。その影響をもろに受ける形で東京都内の美術館が軒並み休館に追い込まれました…。
本展示の会場だったパナソニック汐留美術館も、宣言の発令によって会期が始まるやいなや休館に。
結局、5月末に規制の段階的緩和が行われ、美術館の営業が認可されるまでの間、休館という事態になりました。(ちなみに緊急事態宣言が解除されたのが6月20日。長い…!そしてこの記事を書いている今もまだ蔓延防止重点措置が続いています…。)
やっとのところ再開された都内の美術館ですが、休館中に開催されていた展示の会期延長はなし!!!
多くの企画展がとても短い開催期間で終了を迎える形となってしまいました。
同じ時期に開催されていたモンドリアン展は激混みだったとか…。
パナソニック汐留美術館では、入場が完全時間指定予約制にされていたため、チケット戦争にさえ勝利できれば、快適に芸術鑑賞をすることができました。
この時間予約制度は少人数でゆっくり鑑賞ができるので、感染症対策など関係なく美術館にあったらよい制度ですね~。ちょっと高望みでしょうか。
写実主義の画家、クールベ
ギュスターヴ・クールベは19世紀に活躍したフランスの写実主義画家です。
写実主義とは、その前に流行していた新古典主義やロマン主義に対抗する形でこの時代に広まりました。歴史や宗教を題材にするのが当然だった絵画の潮流の中で、「現実をあるがままに表現しよう」としたのが写実主義でした。
クールベは神々や現実逃避的なお花畑の光景ではなく、「普通の人々の暮らし」をキャンパスに描きました。
「こんにちは、クールベさん」として知られる作品『出会い』はそんな彼の代表作の一つです。因みに画面右側の人物がクールベで、帽子を外し挨拶をしている男性は彼のパトロンなんだそうです。
クールベの画家人生
新しいスタイルでの絵画制作を広めた彼は、当然多くの批判も浴びました。
サロンから作品の出典拒否をされたこともありましたが、積極的に自身のスタイルで作品制作を続けます。クールベは裕福な家の出身であり、そのことも彼が画業を続けられた一因だったようです。
日曜美術館で放送されていたクールベ特集によると、出典を拒否されたサロン会場のすぐ隣に、自費でスペースを借り作品を展示したこともあったそうです。19世紀に個展の開催をしてしまったんですね。
その後、クールベは生前から地位を築く画家へと成長しました。
下の写真は本展示にも飾られていたクールベの写真です。金持ちだからか、いい生活してそうに見えますね。
晩年は悲しい終焉を迎えている
クールベは晩年、少々悲しく人生の幕を閉じています。
1871年にパリ・コミューンという革命自治体に参加。その活動の際、参加者が広場の主柱を倒す事故が起こりました。この責任を負わされたのがクールベ。それまで社会活動とは無縁であった彼ですが、これにより多額の賠償金を背負います。
73年にスイスへと亡命したクールベですが、それからは祖国フランスへ帰ることも叶わず、77年に逝去しました。
クールベと自然風景
クールベはフランスとスイスの国境近くのコンテ地方出身です。
私はクールベというと、冒頭であげた『出会い』や『オルナンの埋葬』といった、人々を描いた作品の印象が強く、そんなにたくさんの風景画を描いていたことを知りませんでした。
しかし、自然豊かな環境で生まれ育ったクールベは、若い頃から自然に魅せられ、多くの作品を制作していたんですね。
『クールベと海』展
今回の展示ではクールベ以外にも、彼の前後や同時代に海に惹きつけられ、その魅力がキャンパスに描き出した画家たちの作品が展示されていました。
海というキーワードでこんなにたくさんの歴史的絵画が集まっている展示は見たことがなかったので、とても良い企画でした。
会場には海を題材とした作品の他にも、クールベが描いた山や森などの風景が多数飾られていました。これがまたどれも綺麗で、日本とは違う大自然で。物凄くマイナスイオンを感じてしまいました。汐留という都心にいながらこんな感覚になれるとは。良い体験をさせて頂きました。
さて、ここで私と友人たちが出した仮説が「こんな絵画を部屋に飾ると日々の生活に癒しが生まれるかもしれない」説です。
どう思いますか。
クールベとモネ
クールベは、キング・オブ・ザ・印象派画家であるモネと交流がありました。(クールベの方が先輩画家)
クールベが描いたフランスの海岸は、モネにとっても思い入れのある海岸となり、同じ場所で2人の画家は制作をしたのでした。
会場には2人が同じエトルタ海岸で描いた作品も展示されていました。
現代を生きる私たちから見ると巨匠である2人の画家が、同じ景色を眺め、同じ夢を語り合っていたのかな~なんて想像すると、胸が熱くなってきますね。
ギュスターヴ・クールベ『エトルタ海岸・夕日』1869年
クールベが何度も描いた波打つ海の景色
展示で印象的だったのが、クールベが海の絵を何枚も描いていたことです。
しかもその内何枚かは、同じ構図で同じ波を描いているんです。
海に惹きつけられ、波の形を如何に理想的な形でキャンパス上に描き出すのか。クールベが海の絵の制作に情熱を注いだ様子がよ~く伝わってきます。
時空を超えてクールベの情熱が伝わってくるみたいで、感動しちゃいますね。はい。
ギュスターブ・クールベ『波』1869年
行けて良かった『クールベと海』展!
コロナ渦でどうなってしまうかとヒヤヒヤしていましたが、無事に訪れることができて良かったです!個人的に満足度の高い展示でした。
今回は会期が非常に短くなってしまい、訪問できなかった方も多いのではないかと思います。またクールベ展が開催されることを期待しています!