ミュージカル『メリリー・ウィー・オール・アロング』を観劇しました
こんにちは。早速ブログを放置してしまいました。笑
これからはちょっと”アート”の範囲を広げて色々な話題でとりあえずブログを書いていこうかな、なんて考えています。
そこで早速今回は、先日観劇したミュージカルの感想です。
5月21日、『メリリー・ウィー・オール・アロング~あの頃のぼくたち~』を観劇してきました!
まだまだ緊急事態宣言が継続され、GW期間中は劇場にも休業要請が出されてしまいました。GW後すぐに公演開始予定だったこちらのミュージカル。どうなってしまうのかと不安だったのですが、規制が緩和されたことによりなんとか無事に公演を迎えることができたようです。中止にならずに本当に良かったです!
役者さんたちにとって、丹念に準備をした舞台が突然発出される休業要請のために無くなってしまうって、本当に苦しいことですよね。早くこんな不自由な情勢が終わってほしいです…。
さて、このメリリー。題名が長いですよね(笑)
しかもカタカナが連なっているので、私はなかなかタイトルが覚えられなかったんですが、会場についた時に英語で書かれたタイトルが私の目に飛び込んできました。
『Merrily We Roll Along』です。
あ、英語だったのね。なるほど、と腑に落ちました。
『メリリー』はブロードウェイミュージカルで、今回が初の日本上陸とのことです。
英国の演劇・オペラに贈られる最高峰である、ローレンス・オリビエ賞を受賞した作品なんだとか。
ストーリーは次の通りです。
フランク(平方元基)は、
ブロードウェイの名もなき作曲家からハリウッドのプロデューサーへ と転身し、大成功をおさめる。
多忙を極める彼には、下済み時代に親しかったチャーリー(ウエンツ瑛士)やメアリー(笹本玲奈) と会う時間もなくなってしまう。
波乱万丈な人生を送り、名声、富、成功を手にしたが、 大切なものをどこかに捨ててきてしまったことに気づく…。 フランクは、人生の岐路を振り返り、思い出したのは20年前。
それは3人が出会い、決意したあの瞬間だった…。夢を追い求めたことのあるすべての人に贈る。
(公式サイトから抜粋)
役者さんについては、私はあまり詳しくないので恐縮なのですが、
TVタレントのウエンツ瑛士さんが出演されていました。
あと、私の母の推しであるLE VELVETSの宮原浩暢さんが、弁護士役で出演されていました。
見に行く前に母から「弁護士さんのことしっかり見て来てね!」と念押しされました(笑)
!!ここから先は舞台のネタバレを含む感想です。ご注意下さい!!
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オラファー・エリアソン〜ときに川は橋となる 感想
東京都現代美術館で開催されていた「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」(会期2020年6月9日〜9月27日)に行った時の感想を書いておこうと思います。
しばらくこんな感じで以前行った美術館や展覧会の話を持ってきそう…笑
コロナウイルス感染拡大の中で開催された展示でしたね。元々3月〜6月に開催が予定されていましたが、感染拡大の影響を受け開催が後ろ倒しになっていました。
無事に開催され何よりでした。
〜読み飛ばして大丈夫な前置き(コロナ禍で入場が大変だった話)〜
開催されてからずっと行かないと〜と思っていたのですが、ぐたぐたしている間にも時は流れ…。私が訪れたのは会期終了の1週間前。
インスタ映えする作品が多い本展示は大人気だったようで、終了間近の美術館はとっても混んでいました。
しかもこの時東京都現代美術館はチケットの事前予約を受け付けておらず…チケットを買うために地下にあるホールまで使い1時間近く並んだあげく、展覧会に入場するのにも1時間程並びました。びっくり〜(笑)
(2021年1月に石岡瑛子展で訪れた際にはネットで事前に時間帯別の入場券が予約購入できるようになっており、この状況は改善されていました。よかったよかった。)
オラファー・エリアソンとは
オラファー・エリアソン(1976年)はアイルランド系のデンマーク人アーティストです。近年では環境問題などをテーマにした、芸術作品を通じて人の心にメッセージを伝えるような作品を数々手がけています。
オラファーは、「スタジオ・オラファー・エリアソン」という工房を持っており、1人で作品を制作するのではなく、このスタジオで様々なプロフェッショナルと共に作品作りをしています。
このスタジオには建築家、科学者、研究者、料理人など様々なエキスパートが集まっていて、100人以上の人々で構成されています。この様々な分野の専門家たちがコラボレーションを通して制作する作品やプロジェクトは、時に芸術を超え科学実験を見ているような印象を受けます。
今回の展示
今回の展示では、近年のオラファーが力を入れている“サステイナビリティ”に焦点を当てた作品が集められていました。サステイナブルは最近耳にする機会の多くなった単語ですが、ここでは簡単にいうと環境や環境問題に配慮した作品、となります。
本展示ではソーラーパワーを利用して光を放つインスタレーションや、作品運送の際、どのようにエネルギー消費を抑えたのかという解説が展示されていました。
近年、ヨーロッパではスウェーデンから始まった「反フライト」運動が広まっています。飛行機って物凄い燃料消費をするので環境にはよろしくない。そのため旅人の間で広まっていった「飛行機の利用をボイコットしよう」というのがこの反フライト運動です。
オラファーはこの運動に賛同する形で、今回の展示作品を空輸ではなく、よりエネルギー消費を抑えられる海運により行いました。
更に、その海運中の船の揺れを利用して新たな作品を作っちゃったりしています。さすがアーティストです。
高尚なものとして扱われる傾向にあるアート作品に環境問題を組み入れてくるのは、とても面白い取り組みですよね。日本と比べ、環境問題に対してより深刻に取り組んでいる人の多いヨーロッパのアーティストだからこその取り組みなのかもしれません。
今回の展示作品
ここからは本展覧会で展示されていた作品を紹介していきます。
氷河
会場に入ると迎えてくれるのは、壁に貼られた大きな紙に、淡い色の模様が浮かび上がっている作品です。この作品は氷河を紙の上に置き、氷が溶けていく過程で絵の具を垂らしていくこで出来上がった作品だそう。
地球温暖化の影響により、氷河は溶け、海面水位の上昇は続きます。オラファーの作品には、この溶けゆく氷河をテーマにしたものがいくつも見られます。
イギリスの現代美術館、テートモダンでは2018年、溶け出した氷河の大きな断片を海から運び込み、美術館の前に置き、溶けていく様子を人々に目撃させるというインスタレーション、《アイス・ウォッチ》が行われました。
また、彼がアイスランドの自然を20年間に渡り観察し、写真に記録を収めてきたシリーズ、「溶ける氷河のシリーズ1999/2019」(2019)は、膨大な量の写真により、この20年間でどれほど自然が変化してきたかを目で見ることができます。
《溶ける氷河のシリーズ1999/2019》(2019)
このシリーズ、けっこう衝撃的でした。知識としては認識しているはずの地球温暖化と、失われていく地球の氷河。その事実を私たちの目で捉え認識できるように、溶けゆく氷河の写真が並びます。元々大きく地表を覆っていた氷河が、年月と共に明らかに面積を狭めていく様子は、地球の自然って、こんなに目で見て分かる形で変化をしてしまっているのだという現実を突きつけてきます。
オラファーは、久しぶりに訪れたある場所に、あるべき氷河がない事に気がつきこのシリーズの制作を始めました。日曜美術館で放送されていたオラファーの特集の中で、「こんなに自然が変わってしまうのなら、もっと頻繁にこの場所を訪れ詳細な記録を取るべきだった」と、無くなった氷河を見つめ哀しそうに語るオラファーの姿は印象的でした。
光のインスタレーション
《太陽の中心への探査》(2017年)
これ、とーーっても綺麗なインスタレーションです。
部屋の中心に設置された多角形のオブジェクトから色とりどりの光が発生し、部屋の隅々にまで鮮やかな光を送っています。
この物体はトゲトゲとした面白い形をしているのですが、この綺麗な輝きを実現するため、スタジオで綿密に計算しつくした上で設計されているのだそうです。
またこの光は、美術館の屋上に設置された太陽光パネルから給電されています。ここでも彼のテーマであるサステイナビリティが組み込まれていました。
《人間を超えたレゾネーター》(2017年)
壁に青を基調としたくつかの輪が描かれた作品があります。これは照らされた光が壁に映し出す作品で、光の輪は何重にもなり、中心の濃い部分を起点として、淡い色の光の輪もぼんやりと部屋の隅の方まで広がっています。
正面から見ると、どういう仕組みなのか不思議に思う作品ですが、横から見ると光の前に金属の輪っかがあり、その輪の上部から手前に伸びた金具の先に小さなLEDライトが付いているのが分かります。
これは暗い海を遠くまで照らす灯台の仕組みを利用した作品だそうです。
大きな部屋の中にこの作品から灯る光のみが暗く、明るく映っていて、静かで凪いだ暗い海に吸い込まれていくように感じました。
水のインスタレーション
《ビューティー》(1993年)
オラファー・エリアソン初期の作品です。暗い部屋の中、照らされる部屋の一点。その空間に虹が浮かんでいます。このビューティーは、空間に霧を噴出し、そこに光を当てることで人工的に虹を生み出した作品です。
手を伸ばすと、すぐそこの虹に触れられそうで、でも伸ばした腕はやはり虹を掴むことができず、腕は虹を通り抜けます。
揺れ動く虹を眺めていると霧が噴出する音すら心地良く感じてきて、ぼーっと眺め続けてしまいます。今回の展示の中で、手放しで綺麗だなーと、ずっと見ていたくなる作品でした。
《ときに川は橋となる》(2020年)
本展示のタイトルにもなっている、本展示で初公開されたインスタレーション作品です。
例えば海で、川で、自然の中の水の動きってとても面白くて、見ていると吸い込まれるように見入ってしまうことってありませんか?私はそういう景色をぼーっと眺めるのが好きです(笑)
この作品はそんな自然の中の水の動きを人工的に、計算の上に、でもどこか不規則に生み出しています。
おわりに
スタジオを構え、多くの人と共に作品制作をするスタイルからも分かるように、オラファーの制作物は、個人で制作できるものの粋を超えたプロジェクトのように思えます。その種類もクオリティも、企業が作る中〜大規模の制作物のようです。
こういった面を見ると、オラファーって現代のレオナルド・ダ・ヴィンチのようですよね。ダ・ヴィンチもまた工房を持ち、人を従えて様々な分野の作品制作をしていました。この時代の芸術家は、芸術家である前に職人で、だからこそ科学などの分野でも功績を残してきました。
オラファーもまた、現代社会に生きるアートの職人のようです。
オラファーのスタジオがこれからどんな作品を制作していくのか、どんなテーマをアートを介して私たちに届けてくれるのか。これからも楽しみです。
「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」感想
東京都現代美術館で開催されている石岡瑛子の大規模回顧展、「石岡瑛子~血が、汗が、涙がデザインできるか(会期:2020年11月14日~2021年2月14日)」に行ってきました!
インパクトの強いタイトルが付いている本展示。血を、汗を、涙をデザインするって?と疑問を持ちながらワクワクと会場に向かいました。恥ずかしながら今まで名前も知らないアーティトでしたが、結果として、素晴らしいデザインワークの数々と出会うことができました。
画像出典: 東京都現代美術館HP
石岡瑛子とは
石岡瑛子(1938~2012)は東京生まれ。デザイナー、アートディレクターとして、日本のみならず海外でも精力的に活動しました。
彼女のデザイナーとしてのスタイルは、常に斬新なことにチャレンジし続けること。石岡のキャリアは資生堂やPARCOの広告デザインから始まり、映画、舞台、オペラ、サーカス、オリンピック、ミュージックビデオなどの演出や衣装デザインなど、生涯にわたりその活動の場を広げ続けました。
「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」の展示作品
今回の回顧展には石岡瑛子が生涯に渡り手がけた数々の作品が展示されており、かなりボリュームのある展示となっていました。2020年に同会場で開催されていたオラファー・エリアソンの企画展は地下のスペースだけでしたが、今回は上階も合わせた計2階が展示スペースでした。
展示作品は、初期に手がけた数々のポスターデザインから始まり、装丁を担当した角川書店の書籍、ポスターの原稿(赤字で指示コメントが入っていたりして興味深いです)、衣装のデザイン画と制作した衣装、更には映像作品やプロデュースしたアーティストのライブ映像、ミュージックビデオなど、様々な作品が展示されていました。ボリューム満点です。
これから詳しく述べていきますが、今回の展示作品を見て垣間見えたのは、石岡の唯一無二のものを作り続けるという信念と、デザインに対する情熱でした。
時系列順に並べられた石岡瑛子デザインの軌跡
展示は、「Timeless:時代をデザインする」、「Fearless:出会いをデザインする」、「Borderless:未知をデザインする」の3章から構成され、展示作品は年代順に並んでいます。これにより、石岡が手掛けたデザインの軌跡を時代を追うように鑑賞することができました。
また、作品と解説を通して石岡のデザイナーとしての信念を知ることがき、会場を進むごとに「石岡瑛子のデザイン作品」ではなく「石岡瑛子のデザイナー人生そのもの」を辿っている気持ちになりました。
因みに、会場2階では石岡本人が自身の作品とデザインへの情熱について語ったインタビューの音源が終始流れていました。この演出もまた、彼女の精神世界に入り込んだかのような気持ちになります。
デザインへの情熱
「血が、汗が、涙がデザインできるか」とは何か。その答えは会場に足を踏み入れるとすぐに見つけることができました。
つまりそれは「デザインで感情が表現できるのか」という問いかけです。石岡はこのように、デザインに対し問いを立て、その答えを模索するように生涯に渡り様々な作品を手掛けました。
「どの作品にも全力で挑戦してきた。昔作った作品を見ると、自分いい仕事してるなと感心することが多々ある。時が経ってもデザインが新しい。まるで昨日作ったかのよう。」とは会場に流れていた彼女の音声の一部です。彼女自身の言葉が語るように、会場に飾られた作品には、古臭さがありませんでした。
石岡瑛子のデザイン人生
1960年代、石岡は資生堂に入社します。入社面接の際、石岡は「男性と同じ仕事と待遇」を求めました。この頃から、彼女には性別の枠に超えていこうとする信念があったのですね。
資生堂時代やPARCOの広告デザインといった初期の作品を見ると、石岡がいかに従来の女性像を壊すために力を入れていたのかが分かります。従来の女性像とは、当時の男性が思い描くような、おしとやかで大和撫子のような女性を指します。そのイメージを破壊するように、石岡は女性の柔軟なあり方を広告デザインを通じて発信していきました。結果として、そのデザインは社会現象をも巻き起こします(後述)。石岡の唯一無二の個性的なデザインは、彼女の信念を社会の人々に伝染させていったのですね。
1980年以降、石岡は活動拠点を日本からニューヨークへと移します。活動拠点を海外に移した背景には、自身の作品を評価しない日本への失望があったのも事実です。
しかし、拠点を海外に移し、アーティストとのコラボレーションに力を入れることで、石岡のデザインは更なる次元へスパークしていきました。この頃には映像作品や舞台美術、北京オリンピックの衣装デザインなど、規模の大きな案件を数多く手掛けています。
印象に残った作品紹介
石岡瑛子の世界にどっぷりと入り込める本展示。作品はどれも個性的でそれぞれがメッセージ性を持つため、1度の訪問ではなかなか拾いきれない部分もありました。そんな中でも私が個人的に印象に残った石岡瑛子の作品をいくつか紹介したいと思います。
社会現象を巻き起こしたという資生堂のサマーキャンペーン
画像出典: SankeiBiz
会場に入ると初めに迎えてくれたのが、この資生堂ポスター群。従来の「綺麗で美しいだけ」の女性像を変え、活動的で健康的な女性イメージを押し出したシリーズです。なんと、ポスターの盗難が発生する社会現象を巻き起こしたそう。現代の視点から見ても、凛と強く、魅力的な女性像が写ります。
PARCOのポスターデザイン
画像出典: TIMELESS
PARCOのポスターシリーズは、石岡の独特なセンスと信念が冴えわたっています。ここでも石岡は女性に対し、女性の在り方を問いかけます。「誰かが作ったイメージから自分を解放してもいんじゃない?」そんな声が聞こえる気がしました。
金閣寺がパックリと割れるシーンが象徴的な『MISHIMA』
『MISHIMA』監督ポール・シュレイダー、美術石岡瑛子、提供コッポラ
石岡が美術を担当した映画『Mishima: A Life in Four Chapters』。この作品は、文豪・三島由紀夫の生涯とその文学作品をテーマにした、アメリカと日本の合同制作映画です。1985年公開の映画ですが、日本では2021年現在、未だ未公開となっています。Wikipediaにはその理由が次のように記載されていました。
当初日本でも『MISHIMA ――11月25日・快晴』の邦題で公開予定だったが、三島役の同性愛的描写などに対し瑤子夫人が反対し右翼団体の一部が抗議しているという噂が流れたため、映画配給会社が躊躇して日本では劇場公開されなかった。
出典:wikipedia
幻想的で美しい舞台美術を伴ったっこの作品が日本で公開されていないというのは惜しいですね。
自身の作品が受け入れられなかったこの経験は、彼女の中で日本への失望へと繋がっていったようです。
Bjork - CoCoon
世界的な歌姫であるBjorkとのコラボレーション作品です。ダンサー・イン・ザ・ダークで主演をつとめ、その演技力を見せつけたBjork。そんな彼女に石岡が興味を持ったタイミングでBjorkから「何か一つでも良いので私の作品のアートディレクターをしてほしい」とラブレターが届き、実現したコラボなのだとか。
両者のスケジュールの都合でコラボが実現したのはこの1作品のみというのが寂しいところです。
コラボした楽曲「CoCoon」のミュージックビデオはぜひ一度見てみて頂きたい。綺麗な音楽と不思議な映像にしばらく忘れられなくなります。ニコニコ動画のリンクを貼っておきます。コメント非表示で見るのがお勧めです(笑)
最初と最後の作品から見えるデザイナー人生
最後の展示スペースには、石岡がデザインを担当をした「白雪姫と鏡の嬢王(2012年)」の衣装が飾られていました。石岡”最後の作品”です。この衣装、ドレスの帯が着物のように見えました。海外で活動する中でも、最後まで日本が彼女のアイデンティティの一部であり続けたのかと思うと、同じ日本人としてなんだか嬉しくなります。
そんな気持ちになりながら、ふと隣を見ると、出口の近くに更に1つ小さな展示ガラスケースがありました。ケースの中に置かれていたのは、紫色が象徴的な、ポップで独特なイラストの絵本でした。「最後の最後にこんなに小さな作品?」と思ってしまいましたが、解説を読むとここにもしっかりと理由がありました。
その絵本は、石岡が海外の高校を卒業する際に制作した卒業制作でした(海外の高校を卒業していたことにも驚きです)。
絵本のストーリーは、石岡自身がモデルであろうエコという少女が「私の夢がかないますように!」と夢をいっぱいに詰め込んだ物語。この”最初の作品”の制作後、石岡は東京藝術大学へ入学し、世界で活躍するデザイナーへの道を歩みます。
この”最初”と”最後”の作品を並べ、本展示は次のようにまとめられていました。
「希望に満ちた少女時代、世界の人々に向けるように英語で作られたこの絵本と、ハリウッドで最後の日々に描いた、自由で自立した白雪姫の物語は、石岡瑛子というひとりの表現者の中で途切れることなく繋がってい」。亡くなる前年のインタビューで彼女が語った言葉は、その証といえるだろう。「仕事をしているというよりは、ずっと長い創造の旅を続けている感覚ね」と話します。
(出典:岡本瑛子展の解説)
この言葉の通り、石岡瑛子とは、最初から最後まで、デザインという創造世界を旅し続けたデザイナーだったんですね。
おわりに
本企画展のwebサイトでも言及されていましたが、石岡瑛子の没後9年が経とうとしている今、回顧展が開催されたことについて、「日本であまりにも名前が知られていない彼女のデザインワーク日本に伝えるため」という意図があったようです。
今回の展示では、石岡がたずさわってきた仕事が年代順に並べられていました。これが石岡瑛子というデザイナーを理解するのにとても効果的な展示方法だったと思います。
商業デザインって、アーティストのように作品と名前が大々的に残るものでもないし、キャリアが長くなれば作品の数も莫大になります。そんな中、年代ごとに石岡の作品を辿ることで彼女の情熱や信念を知ることができました。また、それらが如何に変化し、アーティストとのコラボレーションを続け、切磋琢磨する環境にその身を置くことにより次元の高い制作物を求め続けたのか。彼女のとてつもない凄さに触れることができました。
そんな精神的な部分まで含め、石岡瑛子というデザイナーの作品の魅力を教えてくれた「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」は、素晴らしい企画展でした。大満足です。